Market Report
2026年7月6日から8月4日までに当社が取得したREINS売出情報1,676件のうち、種別「売土地」677件を対象に集計した。異常値ガード後の採用は608件、除外は69件(除外率10.2%)。集計単位は万円/坪、対象は千代田・港・中央・渋谷・台東・目黒・新宿・品川・豊島の9区である。
対象データはREINS(不動産流通標準情報システム)の売出情報であり、当社が自社で取得・集計した。取得日ベースの期間は2026年7月6日〜8月4日。総レコード1,676件の内訳は、売土地677件、売外全(住宅以外の建物全部)998件、その他1件で、本号は売土地677件のみを対象とする。売土地677件はすべて所在区・価格・坪単価が揃っており、この項目に関する欠損はゼロ件である。
売出情報には借地権・底地、私道や共有持分、再建築不可、および入力ミスと疑われるレコードが混在する。これらは坪単価を不自然に押し下げるため、異常値ガードを設けた。定義は「区ごとの坪単価の生中央値の50%未満を除外」で、処理は2パス方式(第1パスで区ごとの生中央値を算出し閾値を確定、第2パスで閾値未満を除いて再計算)とした。結果、677件のうち69件を除外し608件を採用した(除外率10.2%)。上限側のトリムは行っていない。
なお本レポートの数値は「東京都心の地価」ではない。当社が取得した売出情報という母集団における売出坪単価であり、成約価格でも公示地価でも路線価でもない。売出価格は売主の希望価格であって、値付けの根拠や交渉余地は物件ごとに異なる。したがって全数値に必ず件数nを併記しており、nの小さい区の数値は単独では読まないことを前提とする。
| 区 | 件数 n | 中央値 | Q1 | Q3 | 除外件数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 千代田区 参考値 | 11 | 1,500.4 | 1,038.4 | 1,774.2 | 2 |
| 港区 | 48 | 1,301.8 | 1,098.3 | 1,562.6 | 5 |
| 中央区 | 27 | 1,059.7 | 884.3 | 1,623.5 | 2 |
| 渋谷区 | 67 | 944.6 | 607.0 | 1,190.9 | 4 |
| 台東区 | 87 | 703.2 | 563.9 | 990.2 | 19 |
| 目黒区 | 125 | 589.5 | 451.0 | 762.9 | 14 |
| 新宿区 | 74 | 528.6 | 388.5 | 700.1 | 13 |
| 品川区 | 85 | 500.0 | 412.5 | 574.8 | 4 |
| 豊島区 | 84 | 435.4 | 377.8 | 565.4 | 6 |
| 9区 合計 | 608 | — | — | — | 69 |
Q1(第1四分位)とQ3(第3四分位)の幅は区によって大きく違う。中央区はQ1 884.3・Q3 1,623.5で、Q3がQ1の1.84倍に開く(n=27)。渋谷区もQ1 607.0・Q3 1,190.9で1.96倍(n=67)。一方、品川区はQ1 412.5・Q3 574.8の1.39倍(n=85)、豊島区は377.8と565.4の1.50倍(n=84)で相対的に狭い。中央値だけを見て「この区の相場」と一括りにできる区と、そうでない区がある。幅の広い区では、同じ区内でも用途地域・容積率・接道条件によって値付けの水準が層に分かれていると読むのが実務的である。
9区を都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)と周辺4区(台東・品川・目黒・豊島)に分けて再集計した結果は次のとおり。件数はそれぞれ227件・381件で、合計608件と一致する。
| 区分 | 件数 n | 中央値 | Q1 | Q3 |
|---|---|---|---|---|
| 都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷) | 227 | 918.7 | 603.4 | 1,277.5 |
| 周辺4区(台東・品川・目黒・豊島) | 381 | 549.5 | 412.5 | 723.4 |
| 中央値の倍率 | — | 1.67倍 | 1.46倍 | 1.77倍 |
中央値では1.67倍だが、Q1では1.46倍、Q3では1.77倍である。差は上位側でより大きく開く。都心5区の内部でも新宿区の中央値は528.6(n=74)で周辺4区の中央値549.5を下回っており、「都心5区だから高い」という区分は少なくとも本母集団では成立しない。区の名前ではなく、用途地域と容積率で見るべきである。
| 用途地域(大分類) | 件数 n | 構成比 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 商業系 | 126 | 20.7% | 966.0 |
| 工業系 | 22 | 3.6% | 627.4 |
| 住居系 | 403 | 66.3% | 580.7 |
| 近隣商業系 | 57 | 9.4% | 536.2 |
元コード別の件数は、一低135・商業126・一中123・一住101・近商57・二住25・準工22・二中18・二低1(合計608件)である。住居系403件が全体の66.3%を占め、商業系126件(20.7%)がこれに次ぐ。中央値では商業系966.0が最も高く、住居系580.7の1.66倍。工業系はn=22と少なく、中央値627.4は参考水準として扱う。近隣商業系536.2が住居系580.7を下回っているのは、n=57という母数の小ささと、近商が付く街路の立地が区によってばらつくことの両方が影響している可能性がある。断定できる材料は本号のデータには無いため、次号以降で件数を積み上げて確認する。
| 容積率帯 | 件数 n | 構成比 | 中央値 | 〜200%比 |
|---|---|---|---|---|
| 〜200% | 318 | 52.3% | 565.0 | 1.00倍 |
| 200〜400% | 204 | 33.6% | 634.6 | 1.12倍 |
| 400%超 | 86 | 14.1% | 1,002.9 | 1.78倍 |
〜200%(n=318)から200〜400%(n=204)への上昇は565.0→634.6の1.12倍にとどまるが、400%超(n=86)では1,002.9へ跳ね、〜200%比で1.78倍になる。容積率が2倍になっても坪単価が2倍になるわけではなく、400%を超える帯で不連続に水準が変わっている。これは事業用地が土地の面積ではなく建てられる床の量で値付けされることの反映と読める。ただし400%超の86件は千代田・港・中央・渋谷といった商業系の集積する区に偏っている可能性があり、容積率単独の効果と立地の効果を本号のデータでは分離できていない。両者を分けるにはクロス集計が必要で、区別×容積率帯のnが揃う号で扱う。
| 売出価格帯 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 〜1億円 | 135 | 22.2% |
| 1〜3億円 | 309 | 50.8% |
| 3〜5億円 | 89 | 14.6% |
| 5億円超 | 75 | 12.3% |
| 合計 | 608 | 100.0% |
1〜3億円が309件・50.8%で過半を占める。3億円以下を合わせると444件・73.0%であり、母集団の4分の3はこのレンジに収まる。一方で5億円超は75件・12.3%と件数が絞られる。売出件数の多さは買い手の多さと同義ではないが、供給側から見れば1〜3億円が最も競合物件の多い帯であるという事実は、売出時の価格設定において前提になる。個別物件の実額には触れないため、最小値・最大値は本レポートでは公表しない。
1|前月比は無い。本号は第1号であり、比較対象となる前月の同一手順の集計が存在しない。無い数字は作らない。次号以降、同じ取得元・同じ期間長・同じ異常値ガード定義で再集計し、前月比を掲載する。
2|母集団に偏りがある。採用608件の区別内訳は目黒区125件・台東区87件・品川区85件・豊島区84件が厚く、千代田区11件・中央区27件・港区48件は薄い。件数の多い区は当社の取得範囲における売出の出やすさを反映しているだけで、その区の市場規模を意味しない。区をまたいで中央値を横並びに比較する際は、必ずnを併せて見る必要がある。
3|千代田区(n=11)は参考値。9区で最小の母数であり、単独では結論を出せない。さらに異常値ガードで2件を除外した結果、中央値は生値1,119.7から1,500.4へ上振れしている。除外した2件が全体(生値ベースn=13)の中央付近を押し下げていたため、除去によって中央値が34.0%上方に動いた計算になる。母数の小さい区は、除外の影響を強く受けるという一般的な性質がそのまま出ている。千代田区の1,500.4は「この水準で売り出されている事例がある」までを示す値であり、区の相場として引用すべき数値ではない。
4|除外率は区ごとに大きく違う。9区全体の除外率は10.2%(69/677)だが、台東区は19件除外/ガード前106件で17.9%と突出して高い。これは借地権・底地・共有持分といった、所有権の完全な土地ではないレコードの混入が他区より多いことを示す。逆に品川区は4件除外/ガード前89件で4.5%、千代田区は2件/13件だが件数自体が少ない。除外率の高い区では、ガード前の生数値をそのまま参照すると水準を過小に見積もることになる。
5|売出=希望価格である。再掲になるが、本レポートは成約データではない。売出価格と成約価格の差、売出から成約までの期間、取り下げ・価格改定の履歴は本号の集計対象に含まれていない。
6|個別物件は特定できない形にしている。本レポートは区単位以上の集計値のみを掲載する方針で、物件番号・所在地の詳細・面積と価格の組み合わせ、および各区の最小値・最大値は掲載しない。
2026年9月号では、取得元・期間長(約30日)・異常値ガード定義(区別生中央値の50%未満を除外/2パス方式)を本号と完全に揃えて再集計し、区別中央値・Q1・Q3・件数の前月比を掲載する。加えて、区別×容積率帯のクロス集計を、nが一定数に達した区に限って追加する予定である。母数が基準に届かない項目は、掲載しないか参考値と明記して扱う。予測は行わず、集計できた事実のみを載せる。
本レポートの数値をどう事業判断に落とすかについては、次の記事で扱っている。容積率と坪単価の関係を実際の検討手順として読む場合は土地の事業性検討とボリュームチェックの基本、狭小地・小規模地での設計上の制約についてはコンパクトなテナントビルこそデザインが効くを参照されたい。
また、当社が企画から設計・施工・リーシング・売却までを一貫して手掛けた実例として、APG武蔵小山、APG芝大門、APG HOTEL 新御徒町がある。本レポートの集計は、こうした実務の中で日々売出情報を精査している過程から生まれた副産物である。
都心部の事業用地について、売却のご相談・用地情報のお持ち込みを承っています。区・容積率・想定用途をお知らせいただければ、具体的な検討状況をお返しします。
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